はじめに
インド株に代表されるASEAN諸国などの新興国投資は、昨年ごろから投資人気が高まっていました。
昨年のNISA買い付けランキングでも上位に位置し、SNSでも頻繁に目にしていましたように感じます。
参考: SBIホールディングス 「SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」が設定からわずか87営業日で純資産300億円を突破 (2025年1月31日)。
米中摩擦を背景に、中国からの資金逃避先として、人口動態が魅力的なASEAN諸国に注目が集まっていました。
しかし、今年の上半期、特に関税ショック以降は話題に上る機会が減少しているように感じます。そこで、現在の世界経済において、これらの国々がどのような立ち位置にあるのかを改めて情報を整理しました。
現在のASEAN株の立ち位置
2025年9月現在、インドをはじめとするASEAN諸国の株価は、他の主要株価指数と比較して軟調に推移しています。
出典: 日経新聞「選ばれぬ東南アジア株 昨年末比6%安」
NIFTY50(インド主要50銘柄)チャート
ASEAN株が軟調な理由
① チャイナプラスワン戦略の行き詰まり
「チャイナプラスワン」として、次世代の製造拠点として注目されてきたインドや東南アジアですが、トランプ政権による関税政策の影響で先行きは不透明になっています。
中国企業の迂回輸出を防ぐ目的も含まれているため、今後の関税緩和の可否は不透明です。
② AIブームによるハイテク銘柄不足
米国を中心とするAIブームに乗れる銘柄が少ない点も課題です。米国はもちろん、日本・韓国・中国では半導体製造装置やデータセンター関連銘柄が活況を呈していますが、ASEAN諸国は金融やエネルギーなど伝統的な企業群が時価総額上位を占めており、高成長なグロース銘柄が乏しいとみられています。
③ 政治の不安定さ
タイ・カンボジアの国境紛争や、インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方での軍事的緊張など、地政学的リスクが依然として大きい状況です。
④ 印米関係の亀裂
トランプ大統領がクアッド会合を欠席するなど、印米関係には不協和音が見られます。
ロシア産原油を購入している点が、間接的にロシア・ウクライナ戦争に関与しているとの批判を招き、米国との関係を複雑にしています。さらに、TSMCがインド進出を断念したことも、インドが中国寄りとみなされていることの表れといえます。覇権国である米国と安定的に関係を維持できるのか、不透明感が残ります。
⑤ インド経済の減速
2025年には約5年ぶりとなる利下げが行われるなど、インド経済の先行きにも不透明な側面が出てきています。
参考記事:日経新聞より
- 選ばれぬ東南アジア株 昨年末比6%安
- TSMC、インドの誘致断る それぞれの「中国問題」根底
- トランプ氏がクアッド会合欠席か 今秋インド訪問せず、亀裂深まる
- インド中銀が4年9カ月ぶり利下げ、6.25%に 景気底上げ
さいごに
ASEAN株は米国主導のAIブームやトランプ関税、地政学的リスクの影響により出遅れ感を強めています。
一方で、今後米国の金利低下に伴うドル安が進行すれば、新興国株への見直し買いが進む可能性も十分に考えられます。
引き続き動向を注視していきたいと考えています。
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