はじめに
2025年11月13日付の日本経済新聞によると、産業ガス大手のエア・ウォーター(4088)は、子会社である日本ヘリウム(川崎市)において損失の先送りを含む不適切な会計処理があったと発表しました。
現時点で判明している影響額は4案件で計25億円とされ、決算発表の延期も発表されており、これらの問題で直近の株価は大きく調整しています。
もっとも、同社の強みである産業ガス事業は参入障壁が高く、スイッチングコストも大きいビジネスであることから、業績に急激な悪影響が及ぶ可能性は限定的と考えられます。
不適切会計により短期的な株価の下落余地がある一方で、長期的には回復の可能性も見込めると考えられます。
そこで、同社の投資妙味について検討しました。
事業内容(四季報より)
産業ガス大手であり、主力の産業ガス事業は顧客業界による需要の濃淡があるものの、価格改定や不採算取引の縮小が利益面に寄与しています。
同社の売上の過半は、産業ガスとケミカルを融合し、エレクトロニクス産業向けにガス・電子機器・関連部材を提供するデジタル&インダストリー分野に依拠しています。

業績状況
売上高は一時的に下振れしたものの、長期的には増加傾向が続いています。一方で、ROEは低下局面が見られ、収益性の質が悪化していた時期もありますが、足元では改善の兆しがうかがえます。
出典:IRbankより作成
今後の見通し
同社は収益性の向上を経営目標に掲げており、営業利益率をと段階的に引き上げ、2030年に時価総額1兆円規模を目指す方針です。
出典:中期経営計画(2025~2027年度)
また、半導体工場向けのトータルソリューション事業、インドや北米を含むグローバル産業ガス事業の強化を進めています。
出典:中期経営計画(2025~2027年度)
ファンダメンタル(2025年11月14日 楽天証券より)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| PER | 9.54倍 |
| PBR | 1.00倍 |
| 予想配当利回り | 3.33% |
| 自己資本比率 | 41.37% |
配当方針については、従来予想の水準を維持した上で実行することが発表されています。

また、BPSは年々積みあがっており、足元では株価をも下回る水準で推移しています。

株主優待について
100株以上の保有で、株数に応じた株主優待を受けることができます。

出典:公式HP
株価推移と今後の注目点
株価は高値圏から約20%ほど調整し、8月の急伸前の水準まで戻してきています。
不適切会計に伴う影響額が25億円と、時価総額から見れば相対的に大きい金額とは言えないものの、決算報告の遅延が続いていることから、今後の調査結果によっては、株価の下落余地が残されている可能性があります。
特に、直近のニデックの事例のように特別注意銘柄に指定された場合、機関投資家やファンドによる大量売却が発生するリスクも否定できません。そのため、リスク回避の観点からも、状況の見通しが立った段階で投資判断を行う方がベターと考えられます。
出典:Yahoo!ファイナンス
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