はじめに
名古屋地域は、リニア中央新幹線の開業や中部国際空港(セントレア)におけるインバウンド需要の拡大など、今後の成長ポテンシャルが高い地域の一つといえます。
そのような中、名古屋鉄道(9048)は名鉄都市開発、日本生命保険、近畿日本鉄道および近鉄不動産とともに、「名古屋駅地区再開発計画」の事業化を決定しており、将来的な名古屋駅周辺の発展によって同社も恩恵を受ける可能性が考えられます
一方で、株価は過去10年間にわたり低迷が続いており、割安感が出てきており、同社への投資妙味について検証いたします。
事業内容
名古屋鉄道は以下のような多角的な事業を展開しています。
- 交通事業:基幹となる鉄軌道事業を中心に、中部圏を基盤とするバス事業、タクシー事業を展開
- 運送事業:全国ネットワークを持つトラック事業のほか、フェリーや高速船による貨物・旅客輸送
- 不動産事業:オフィスビル賃貸、分譲マンション販売、ビル管理
- レジャー・サービス事業:ホテル業のほか、ロープウェイ・博物館などを運営する観光施設事業
- 流通事業:百貨店業を中心に、コンビニエンスストアなどを含む物品販売業
- 航空関連サービス事業:飛行機・ヘリコプターを活用した航空事業、調査測量事業、航空機整備事業、中部国際空港の国際線向け機内食事業
出典:2025年3月期 投資家向け決算説明会資料
業績状況
コロナ禍における赤字転落を経て業績は回復基調にありましたが、直近では成長の一服感も見受けられます。

これは、運輸事業における経営統合の影響により配送効率が悪化し、営業利益が低下したことが一因とされています。来期については、マンション・戸建て分譲の反動減が影響し、不動産分譲事業の減収が見込まれています。また、リート事業への新規参入により、外部資金を活用しつつ成長加速を目指すとしています。
参考:日経新聞: 名鉄グループ、リート事業に参入 5年で資産規模1千億円へ
営業利益の目標未達など気がかりな点はありますが、短期的な悪材料については市場である程度織り込まれているとも考えられます。
出典:2025年3月期 投資家向け決算説明会資料
今後の見通し
営業利益の目標は、2026年度に500億円、2030年度には700億円を掲げています。また、配当性向は30%を基本方針としています。
不動産関連を中心とした成長分野への投資とともに、政策保有株式や遊休資産の売却による財務健全化を計画しています。
出典:中期経営計画(2024年度~2026年度)
ただし、名古屋近郊はインバウンド需要が東京・大阪・京都などと比較して弱く、観光地としての魅力度が東京や大阪と比べて劣ることから、再開発によって見込み通りにインウンド需要が創出されるかはやや不透明といえます。
出典:統合報告書 2024
ファンダメンタル(2025年8月1日時点・楽天証券より)
- 予想PER:11.87倍
- PBR:0.71倍
- 配当利回り:2.32%
- 自己資本比率:31.87%
PBRが1倍を大きく下回っており、かなり割安な水準にあるといえます。ただし、他の鉄道株にも割安な銘柄は見られるため、同社だけが際立って割安というわけではありませんので、同業種との比較も重要と考えられます。
株主優待について
200株以上の保有で株主優待券が、600株以上で株主優待乗車証が贈呈されます。
内容としては名古屋近辺に居住する方以外は使用しづらく、割引率が5~20%程度にとどまっていることから、若干の物足りなさも感じられます。
一方で、リトルワールド、日本モンキーパーク、南知多ビーチランド&おもちゃ王国といった施設は、ファミリー層にとって魅力的な内容といえるでしょう。
株主優待乗車証(600株以上)
- 電車線招待乗車証(4枚、保有株数に応じて増加)
株主優待券(200株以上)
- 「リトルワールド」・「日本モンキーパーク」・「南知多ビーチランド&南知多おもちゃ王国」共通入場招待券
- 「明治村」入村割引券
- 名鉄百貨店・オンセブンデイズ等で利用可能な買物割引券
- 名鉄グループホテルの宿泊・飲食割引券
- 名鉄観光サービスの旅行商品割引券
- 名鉄観光バスの企画旅行商品割引券
- 太平洋フェリー、新穂高ロープウェイ、中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ、ぎふ金華山ロープウェー等の運賃割引券
- 名鉄自動車整備の車検・点検割引券
- 名鉄病院の人間ドック割引券
- 「ゆのゆ TOYOHASHI」のラウンジ利用割引券 など
株価推移と今後の注目点
過去10年間、株価は大きく調整を続けており、現在は最安値圏に位置しています。
不動産事業の一時的な停滞など短期的な懸念材料はあるものの、中長期的には名古屋経済圏の発展に伴う成長余地を見込める点で、下値リスクは限定的と考えることも可能です。
出典:Yahoo! Finance
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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