日産 追浜工場の閉鎖について
2025年7月、日産自動車が主力工場の一つである追浜工場(神奈川県横須賀市)の生産終了を発表しました。
日産は、追浜工場の従業員について他工場やグループ内事業への異動を通じて雇用を維持する方針を示していますが、同時にグローバルで2万人規模の人員削減を計画しており、今後、どこまで雇用が守られるのかが大きな焦点となっています。
出典: youtube TBS NEWS DIG Powered by JNN
私自身も、地方のいわゆる「企業城下町」型の勤務・生活をしている会社員であり、本件は決して他人事ではありません。
今回はこのニュースに対して、私なりに感じたことを整理してみたいと思います。
①動くリスク・動かないリスク
日産を例にとると、経営問題は今に始まったことではなく、特にここ数年は、赤字や販売不振が続き、経営再編は時間の問題であった側面もあり、今回の決断はやむを得ない面もありました。
それでも、長く勤務してきた従業員の立場で見れば、そう簡単に「見切り」をつけるのは難しいはずです。特に40代以降の中堅層にとっては、自宅購入、子どもの学校、家族の生活といった要因が重くのしかかります。
出典:いらすとや
いわゆる「サンクコスト効果」も影響してきます。
「サンクコスト(埋没費用)」とは、すでに投じた時間・お金・労力などで、今後の意思決定に本来影響を与えるべきでないものを指します。
「サンクコスト効果」は、損失が見込まれていても、「これまで費やしてきた努力を無駄にしたくない」という心理により、合理的な判断ができなくなる現象です。(参考:マイナビニュース)
追浜工場のケースでも、「今さら別の土地に引っ越せない」「転職して一からやり直すのは…」という気持ちが強く働くことは想像に難くありません。しかしこれは、長期的には状況を悪化させる原因にもなりかねません。動くリスクもありますが、動かないリスクもあることを理解する必要があります。
電機業界はシャープをはじめ、既に統廃合が進んでいますが、今後は自動車業界も再編が進む可能性が高く、“待ち”の姿勢より、“自ら動く”姿勢が必要とされる局面が増えていくことも考えられます。
② 企業城下町(地方)で働くことのメリットとデメリット
地方在住の私にとって、企業城下町での勤務は生活コストを抑えつつ、大企業クラスの収入を得られるという意味で、比較的ゆとりのある生活ができる可能性があります。
しかし一方で、地方は「選択肢が少ない」という構造的な課題を抱えています。都市部であれば通勤圏内で仕事を探すことが可能ですが、地方では同業種・同水準の仕事がほとんど存在しないことも珍しくありません。
また、地域全体が特定企業に依存している場合、その企業の業績悪化は雇用の減少、地価の下落、市税収の減少、市政の弱体化など、連鎖的なダメージを引き起こします。
また、不動産投資の世界でも、企業城下町は「単一リスク」として警戒される地域です。一企業に依存した地域経済は、非常に脆弱な基盤の上に成り立っているのです。
③ 個人が備えるためにできること
では、こうした構造の中で働く地方在住者がどのように備えるべきか。私自身も含め、以下の3点が重要だと考えます。
- 持ち運べるスキル・資格を身につける
ITスキル、語学力、業務改善手法、財務知識など、転職市場で評価される「汎用スキル」は、働く場所に関係なく強みになります。 - ペーパーアセット(副業・投資・資産運用)を育てる
地方在住で生活費が安く済む利点を活かし、副業や資産運用を通じて「会社に頼らない収入の柱」を少しずつ作ることが重要です。 - 会社の経営状況を定期的にチェックする習慣
自分の会社がどこに向かっているかを“知る力”は、行動判断の早さに直結します。IR資料や業界動向に触れる習慣を持つことは、自己防衛でもあります。
まとめ
企業城下町の大企業に勤めることは、地元で安定した生活を築くうえで大きなメリットがあります。しかし、その安定は企業の業績という外部要因に大きく依存していることを忘れてはなりません。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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