はじめに
JX金属(5016)は、2025年3月に東証プライム市場に新規上場した企業です。
1905年に開業した日立鉱山を源流とし、現在は半導体製造に用いられる金属薄膜材料「スパッタリングターゲット」で世界シェア6割を誇ります。
製錬などの旧来型の事業は縮小傾向にあり、今後は半導体向けの高付加価値材料を成長ドライバーと位置付けています。
スパッタリングターゲットとは
「スパッタリング」とは、プラズマ中のイオンを金属などの材料に衝突させ、その原子や分子を飛び出させて、基板(シリコンウェハーやガラス等)に薄膜を形成する技術です。
この際、イオンが衝突する「的」となる材料が「スパッタリングターゲット」と呼ばれます。半導体製造過程における重要な消耗品であり、世界的な半導体需要の増加に伴って、同社の成長も期待されます。
出典: JX金属HPより
事業内容
JX金属の事業は大きく「フォーカス事業」と「ベース事業」の2つに分類されます。
■ フォーカス事業(成長領域)
- 半導体材料セグメント:
スパッタリングターゲット、化合物半導体材料、高純度金属などを提供 - 情報通信材料セグメント:
FPC(フレキシブルプリント基板)向け圧延銅箔や、AI・IoT・通信インフラ用途の高機能銅合金などを提供
■ ベース事業
- 基礎材料セグメント:
銅・レアメタルの調達と供給、製錬・リサイクルなどを通じた資源循環型ビジネスを展開
出典:2025年3月期 決算説明資料より
2025年現在、売上構成比では半導体材料セグメントが約25%を占めていますが、中期計画によると2027年度には45%まで拡大する見通しです。
出典: JX金属HPより
業績状況
EPS(1株あたり利益)は年によって変動があるものの、中期的には増加傾向にあります。
とくにフォーカス事業の中核である半導体関連分野の伸長が成長ドライバーとなっています。
出典:IR Bank
今後の見通し
JX金属は、2040年にかけてフォーカス事業を3倍規模に拡大する計画です。
中期的には、2023年度〜2027年度にCAGR(年平均成長率)35〜40%という非常に高い成長を見込んでいます。
出典:2025年3月期 決算説明資料より
ファンダメンタルズ(2025年7月25日時点|楽天証券より)
- PER(株価収益率):11.85倍
- PBR(株価純資産倍率):約1.34倍
- BPS(1株あたり純資産):約748.64円
- 配当利回り:約2.11%
- 自己資本比率:約47.96%
現在のPER水準から見ると割高感はなく、堅実なバリュエーションといえます。
株主優待について
2025年7月時点では、株主優待制度は導入されていません。
株価推移と今後の注目点
株価は上場時の公募価格(820円)を直近で突破しています。
IPO銘柄において、公募価格突破後に上場来高値を更新すると加速しやすい傾向もあり、チャート的にも注目に値します。
出典:Yahoo!ファイナンス
おわりに
JX金属は、歴史ある非鉄金属企業から、先端半導体材料を軸とする成長企業へと変貌を遂げようとしています。
世界的にみても高シェアを持つスパッタリングターゲットなど、グローバル競争力のある製品を抱える点が強みです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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