はじめに
『株で儲けたければ社長を見ろ』 著:田端信太郎(PHPビジネス新書)

本書は、著者がリクルート、ライブドア、ZOZOといった多様な企業で経営者と仕事をしてきた実体験をもとに、「会社の変化を生み出す最大の震源地は社長である」と主張をされています。
1. 社長を理解することの重要性
企業の成長や業績は、経営トップの判断と行動に大きく左右されます。経済産業省の報告書『持続的成長への競争力とインセンティブ 〜企業と投資家の望ましい関係構築〜』によると、創業オーナーが経営を担う企業ほど、株価パフォーマンスが高くなる傾向があります。これは、経営者が大株主であるため、企業価値の向上に対するインセンティブが働きやすいこと、そして長期的な視点で経営判断を行うためです。
また、投資判断に限らず、転職や就職を考える際も、「社長の価値観やビジョン」を理解することで、企業のカルチャーが自分に合うかを見極める手助けになります。
2. 社長を見る際の着眼点
著者は、社長のプロフィールが企業文化に重要な要素であると述べています。
- 出身地
- 学歴、職歴、キャリアパス(エリート街道か叩き上げか)
- 学生時代の部活動(個人競技か団体競技か)
- 親の職業
- 出身校が公立か私立か
EC業界の代表的存在であるZOZOの前澤友作氏と、楽天の三木谷浩史氏が対比的な例として紹介されています。
- 前澤氏は、元バンドマンで、既成概念にとらわれず独創的なアイデアを生み出すタイプ。例として「ZOZOスーツ」や「つけ払い」などの革新的サービスがあります。
- 三木谷氏は、体育会のスポーツマンで、既存のマーケットにおける競争に強みを持ち、地道にシェアを獲得する戦略を重視しています。
同じEC企業であっても、経営者の人格や価値観によって企業文化やビジネスモデルは大きく異なることがわかります。
出典:ChatGPT
3. 印象に残ったポイント
印象的だったポイントは下記の通りです。
- 親子経営の距離感の難しさ
特に筆者は娘に事業を継がせることはリスクが高いと述べています。これは父-娘間の距離が近すぎてガバナンスが効かず、トラブルに繋がる可能性が高い。例として、大塚家具やスノーピークが挙げられる。 - 「社会貢献」よりも「個人の欲望」が原動力となる経営者の方が信用できる
「こんな場所では自分の飢餓感(=欲望)は満たされない」と感じて環境を変えた人の方が、本気で行動しやすい。 - 自分の価値観ほかのスタッフに押し付けてしまう
ゼンショーの幹部陣は、かつてワンオペで店舗を運営していた経験があるため、現場に同様の水準を求めてしまい、労働環境に問題を生じさせたとされています。
まとめ
本書『株で儲けたければ社長を見ろ』は、企業分析の起点として「社長を見る」という視点を提供してくれる一冊です。数字や財務指標だけでなく、社長の人生観や価値観、背景にまで目を向けることで、企業の将来像がより鮮明に見えてきます。
投資家にとっても、転職を考えるビジネスパーソンにとっても、非常に示唆に富んだ内容といえるでしょう。
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