『マネーの公理 ~スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール~』リスクテイクの重要性を示す名著

キャリア戦略・転職活動

はじめに

『マネーの公理 ~スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール~』(マックス・ギュンター著)は、金融投資の世界では名著とされている書籍です。

金融投資にとどまらず、キャリア形成という観点でも深い示唆を与えてくれました。

本書の中で特に印象に残った部分を、いくつか抜粋してご紹介します。


① 本書の概要

スイスの銀行家たちは、海もなく、鉱物資源にも乏しく、土地も決して肥沃ではないという環境下にありながら、世界最高水準の平均年収(2017年時点)を誇っています。その理由のひとつは、「合理的にリスクを取り、それを適切にコントロールして富を築いてきた」点にあります。

彼らが実践してきた暗黙知や不文律を言語化したものが「チューリッヒの公理」と呼ばれ、12の公理と16の補足的な副公理から構成されています。


② リスクテイクの重要性

本書では、以下のような言葉が並び、リスクに対する姿勢の重要性を強調しています。

  • リスクを避けることではなく、あえて自分をリスクにさらすことが重要である。
  • 「安全志向」に偏りすぎず、自分の許容範囲内でリスクと向き合う覚悟を持つべきである。
  • もし心配事がまったくないなら、それは十分なリスクを取っていない証拠である。
  • 常に何かを心配している状態は、人生において自然な一部である。心配を避けたいのであれば、貧しさの中に留まるほうが良い。

これらの言葉は非常にインパクトがありますが、現代の日本の状況とも重なります。人口動態やGDPの推移などの各種データからも、日本で平均的な生き方をしているだけでは、日本において経済的な豊かさを手にすることは難しい時代となっています。

また、商社・メガバンク・医者のような堅実なかつ高いリターンを得る大企業・職種になるためには、学歴なども重要になることから、社会人になってから目指すことは厳しいといえます。

であれば、成長分野であるAI、DX、あるいは半導体業界などに挑戦することも、一つの選択肢として挙げられると思います。また、リスク許容度が高い方や、ご自身のスキルに自信のある方であれば、ベンチャー企業への転職や起業も視野に入ります。

また、時間的リスクをとって副業に取り組んだり、節約に励み投資の「種銭」を確保して、収入の複線化を図ることも、戦略の一つです。

個人的には、特に若手~中堅層の社会人においては、昨今の賃上げトレンドを活かし、「まずは転職によって年収を上げること」がリスクリターン的に最も良いと思います。


③ 機動力の重要性

根を下ろしてはいけない。それは動きを鈍らせる」——これが第6の公理で語られる教訓です。

本書では、子どもとの思い出が詰まった不動産に愛着を持ちすぎた結果、売却の好機を逃してしまったという実例が登場します。

これは、現代においてはキャリアの意思決定にも同様のことが言えると考えます。

同じ会社に数年在籍すると、環境や同僚との人間関係に慣れてしまい、「変えたくない」という感情が芽生えることがあります。しかし、斜陽産業での業務経験や、他の会社でも通用するポータブルスキルの伸び悩みといった状況が続くと、年齢を重ねるごとにキャリアの選択肢は確実に狭まっていきます。特に、今後はAIによって、ホワイトカラーの業務が大きく見直される可能性もあります。

私もそうですが、30代前半は、職務上の裁量も増え、また結婚や住宅取得などのライフイベントが重なる時期といえます。その結果、キャリアを見直すタイミングを逃し、漫然とキャリアを積み重ねてしまう人も少なくありません。

馴染みある環境を離れ、未知の領域に踏み出すことには当然、不安や恐怖がつきまといます。しかし、だからこそ「根を下ろさず、身軽でいること」は、キャリア形成において非常に示唆に富んだ教えであると感じました。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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