はじめに
世界の工作機械市場は、2024年から2032年にかけて年平均成長率(CAGR)8.1%の高成長が期待されています。
これは、自動車、電子機器、航空宇宙、軍事設備などの各分野で高精度なコンポーネントが求められている一方で、深刻な人手不足により、従来のように工作機械のオペレーターを十分に確保できない状況が背景にあります。
出典:FORTUNE BUSINESS INSIGHTS
こうした状況を受け、工程の集約化や自動化を実現する「MX(Machining Transformation)」へのニーズが世界的に高まりを見せています。その中で、DMG森精機(6141)は、工作機械分野において世界トップクラスのシェアを持ち、この成長トレンドの恩恵を受けるポジションにあると考えられます。
出典:DMG森精機 公式HP
本記事では、同社の事業構造や業績動向、中長期的な展望を踏まえ、投資妙味を考察しました。
事業内容
DMG森精機は、5軸加工機や複合加工機など、先進的な工作機械に強みを持つメーカーです。中核となる製品は、NC旋盤やマシニングセンタであり、これらを軸にグローバル市場で展開しています。
*出典:DMG森精機 公式HP
近年は、単なる機械の提供にとどまらず、自動化およびデジタル統合を含む製造ソリューションを包括的に提供する「MX戦略(Machining Transformation)」へのシフトを加速しています。
また、保守・メンテナンスやIoT接続支援といったインダストリアル・サービス事業の強化にも注力しており、製品のライフサイクル全体にわたる収益モデルの構築を目指しています。
こうした取り組みにより、1台あたりの機械受注単価は右肩上がりに推移しており、今後も堅調な成長が見込まれます。
出典:2025年度第1四半期(1〜3月)決算説明資料
3. 業績状況
売上収益はFY2023まで堅調に推移していましたが、FY2024以降は市況の悪化を背景にやや軟調な展開となっています。
一方で、FY2024まで減少傾向にあった受注残高は、FY2025第1四半期に入り回復基調へと転じており、今後の業績回復に向けた兆しが見られます。
出典:DMG森精機公式HP
4. 今後の見通し
中期戦略の中核をなす「MX戦略」では、自社ブランドの強化、直販モデルの推進、さらには産業用ソリューションの提供へと軸足を移しています。
今後もオペレーター不足や高精度加工のニーズに伴い、工程の集約化・自動化需要は一層高まると見込まれており、同社の戦略と市場トレンドは強く連動しています。
出典:2025年度第1四半期決算説明資料
5. ファンダメンタル(2025年6月11日時点/楽天証券等より)
FY2025は業績面でのボトムと予想されており、FY2026以降の回復が期待されています。このため、足元のPERは一時的に高く見える状況です。
- PER:約27.71倍
- PBR:約1.35倍
- 自己資本比率:約39.44%
- 配当利回り:約3.33%
配当利回りが3%を超えている点は魅力的であり、将来的な株価上昇によるキャピタルゲインと配当収入によるインカムゲインの双方を狙える可能性があります。
6. 株主優待について
DMG森精機では、500株以上を1年以上継続保有している株主を対象に、Japan National Orchestra(JNO)のコンサートチケット(1〜2枚)またはCDを選択できる株主優待を実施しています。
7. 株価推移と今後の注目点
2024年12月期には業績の下方修正が発表され、株価は一時的に調整局面を迎えています。
出典: YahooFinance
所感
JIMTOF2024(日本国際工作機械見本市)に関する業界取材動画*によると、現在の工作機械業界全体は調整トレンドに入っているとの見方もあります。しかし、そうした局面だからこそ、中長期での成長余地が十分にあると考えられます。
出典:YouTube/ものづくり太郎チャンネル「【工作機械の最新トレンド!】今後の製造業はこうなる!」
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