GPS・検索データ オルタナティブデータの投資活用事例まとめ

自己研鑽

はじめに

前回、オルタナティブデータ*は、今後の投資判断において有効な手法になるのではないかと述べました。

そこで今回は、実際の論文をもとに、オルタナティブデータの活用事例を整理し、投資のヒントとしてどう応用できるかを考察してみます。

*「これまで一般的には活用されてこなかったPOSデータ、クレジットカード利用情報、位置情報、衛星画像などの非伝統的なデータ群」を指します


事例①:GPSデータを活用した自動車生産量のリアルタイム推計

出典:
「GPSデータに基づく自動車生産量のリアルタイム推計値の株式投資における有効性」
(水門善之/野村證券 データサイエンス部・金融経済研究所)

使用データとモデルの構築

  • 国内主要自動車メーカー(トヨタ、日産、ホンダなど)の工場群を対象として、昼間および夜間における工場内の滞在人数を、スマートフォンのGPSデータから推計
  • 実際の生産量とモデル推計値が一致するように、モデルを調整・検証

投資戦略への応用

  • 前年同期比や前月比での変化から、生産量の伸びが継続している銘柄にロング(買い)、減少が続く銘柄にショート(売り)というポジションを構築することで、市場平均をアウトパフォームする傾向が確認されました

所感

  • GPSデータを活用することで、企業の生産活動を速報性をもって把握できる可能性があり、投資チャンスに繋がると考えられます。
  • 有名なサービスとしては、ドコモのモバイル空間認識などがありますが、個人レベルで利用するには高額なため、現状での活用は難しいと考えられます。今後、より安価なサービスが期待されます。

*docomo 公式サイトより


事例②:Google検索データによる旅行需要の予測

出典:
「景気判断における検索データの利用可能性」
(白木紀行・松村浩平・松本梓/日本銀行 調査統計局)

使用データとモデルの構築

  • 東日本大震災前後の「旅行関連キーワード」の検索ボリュームを対象として、検索動向から旅行需要の変化をモデル化し、実際の統計データと照合することで、公式統計が公表される2カ月前の段階で、旅行需要の大幅な減少とその後の回復を把握可能な結果が得られています。

投資戦略への応用

  • 今回の推計結果をみると、震災発生に伴う3月の旅行取扱額の落ち込みを、 5 月中旬の旅行取扱額の公表を待たずに、4月上旬の時点で把握できていたことがわかります。

所感

検索ボリュームの急減・急増は、消費者行動の変化を即座に反映しており、業績先行指標として有用と考えられます。たとえば、宿泊業、旅行業、鉄道・航空会社、小売など、消費関連銘柄のタイミング投資に活かせる可能性が考えられます。

おわりに

今後は、SNSレビューやECサイトの評価データなど、より生活に近いオルタナティブデータも活用範囲に入ってくると考えられます。

従来型の決算発表や統計データに加え、こうした非伝統的データを補助的に取り入れることで、投資判断の“解像度”を一段と高められるのではないでしょうか。


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